世界を変えた10冊の本 池上彰
★★★★★
池上彰氏の独断と偏見の選択による、世界を変えた10冊の本についての解説。
アンネの日記
聖書
コーラン
プロテスタンティズムと資本主義の精神
資本論
イスラーム原理主義の「道しるべ」
沈黙の春
種の起源
雇用、利子および貨幣の一般理論
資本主義と自由
の10冊である。
こうした歴史書を読もうとしている私のような入門者にお勧めできる本だと思う。
例えば、プロテスタンティズムと資本主義の精神は、マックスウェーバーが1904年に発表した本であり、強欲的な資本主義の形成と禁欲的なキリスト教との密接な関係性を明らかにしたものである。
19世紀半ばまで、ヨーロッパの人々の生活は生きるためだけのお金があればそれに満足するとう牧歌的なものだった。
しかし、仕事に熱中して競争に勝ち抜き多額な利益を挙げる新しいタイプの労働者が出現するようになる。
マックスウェーバーは、そういった人々(経済的に成功した人々)にはキリスト教のなかのプロテスタントの信者が多いことに注目して分析する。
プロテスタントは、宗教改革によって生まれた宗派である。
16世紀にドイツとスイスで起こった宗教改革でプロテスタントは誕生した。
もう一方の宗派のカトリックは日常生活で罪を犯すと、神父に懺悔することでその罪は赦されるとされている。
時の教皇レオ10世は免罪符を売り出し、教会のために寄付をすることで過去の罪は赦され、天国に行けるとした。
すなわち、このレオ10世の時代にキリスト教の衰退が進んだともとれる。
一方、ドイツのルターはこうした教皇の方針を批判し、人は信仰によってのみ救われるとした。
こうしたルターの方針を信じる勢力を抵抗者(プロテスタント)と呼んだ。
やがて、カルヴァンによる予定説がヨーロッパで広がる。
予定説とは人々の運命はあらかじめ決まっていて、今世でどんなに良い行いをしても必ずしも天国にいけるかは分からないという教えである。
しかし、現世での行いこそが救いと考えていたキリスト教信者には受け入れ難かった。
そうしたキリスト教信者たちは救いを自分で作るしかなかった。
すなわち、「自分が選ばれし者だと信じて善行を行う」ことである。
そもそもプロテスタントでは職業は神から与えられた義務(ベルーフ・天職)であるので、自然と仕事に全力を尽くすようになる。
労働に全力を尽くすには生活を禁欲的にしなくてはならない、そしてキリスト教では禁欲が重んじられているので、貯まったお金も新しい投資へ回していくこととなる。
そして、資本主義社会のなかで、プロテスタントの成功者が多いという結果になる。
資本主義社会での成功に不可欠な要素である「禁欲」そして「努力」をプロテスタント達は自然に身に付けていたのである。
これまで絶対読まないだろうなぁと思っていた歴史書であるが、池上氏の分かりやすい解説を見て、読みたくなった。
これから資本主義社会で揉まれていく自分にとって、その社会のメカニズムを知っておくことはきっと必要だろう。